<15歳以上の中等症~重症のアトピー性皮膚炎の方のためのお薬です>
アトピー性皮膚炎治療のための生物学的製剤(抗体医薬)です。
アトピー性皮膚炎では「IL-13」という物質(サイトカイン:体内の細胞同士の情報伝達を行うタンパク質)が過剰に作られ、皮膚のバリア機能低下や炎症、かゆみを引き起こします。
アドトラーザ®はIL-13に結合し、その働きを抑えることで、皮膚の2型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。
アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
日本では2023年9月より発売されましたが、海外では2021年6月より発売されております。
- 正常な皮膚の状態
- アトピー性皮膚炎の症状がある状態
- アドトラーザにより症状が改善
治療の対象となる方
- ❶ アトピー性皮膚炎の症状が中等度から重症の方
- ❷ 通常の外用薬治療(ストロングクラス以上のステロイド外用薬やタクロリムス外用薬など)を6カ月以上行っても効果が不十分な方
- ❸ 本剤投与時にアトピー性皮膚炎の病変部の状態に応じた抗炎症外用剤や保湿外用剤を継続使用できる方(外用剤の併用が原則となります)
※アトピー症状の軽度の方、注射だけをご希望される方には適応がありません。
アドトラーザ®治療のメリット
- ❶ 外用薬を塗る量や手間を少なくすることが出来る
- ❷ ステロイド外用剤の強さ(ランク)を下げることが出来る
- ❸ 皮膚症状をより改善させ、生活の質を向上させることが出来る
- 自身をもって人前に立つ
- ファッションを楽しむ
- 対人関係に積極的になる
アトピー性皮膚炎の治療では、以下のような状態を維持することを目指します。
- ① 症状がない状態、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態
- ② 軽い症状はあっても、急に悪化することはなく、悪化してもそれが続かない状態
アドトラーザ®の投与方法
初回に600mg(4本)、2回目以降は300mg(2本)、2週に1回皮下注射を行います。
1本の量は1mlです。(参考:デュピクセントは1本2ml)
アドトラーザ®の注射部位
- 二の腕(上腕部)の外側
- おなか(腹部)
- 太もも(大腿)
アドトラーザ®の投与時の注意
アドトラーザ®の副作用
アドトラーザ®の治療費
アドトラーザ®薬剤費 | 1本あたり 29,295円 |
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3割負担の方 | 初回4本:35,154円、以降1回2本:17,577円) |
※別途、初再診料、処方箋料などがかかります。
※医療費助成制度
アドトラーザ®投与に当たる治療費は高額になります。患者さんの経済的な負担を軽減するために、さまざまな医療費助成制度があります。
当院でのアドトラーザ®導入について
① 導入前診察
(注射は予約制になります。即日の注射は当院では行っておりません。)
6か月以上の外用薬治療が正しく行われていたかの確認
重症度の判定(IGAスコア、EASIスコア、病変面積の医師による判定)
症状の自己評価(POEMスコアシートの記入、POEMについては下記Q&A参照)
経過を判定するための採血や症状の写真を取らせていただく場合がございます。
② 初回(1回目):院内で4本投与
③ 2週間後(2回目):院内で2本投与、以降、2週間おきに通院していただきます。
アドトラーザ®についてよくある質問 Q&A
- 受診した当日に注射を受けられますか?
- 受診当日には、アドトラーザ®注射の投与はできません。これまでの治療期間や治療内容、自宅での処置の仕方などを確認し、皮疹の程度をスコア化します。その上で医師が適用と判断されれば、次回受診時に投与開始となります。
当院では、注射は予約制になります。即日の注射は行っておりません。 - 何回の治療で効果の実感ができますか?
- 個人差はありますが、1回目の注射後2週間で効果が認められる方もいます。通常投与開始から16週までには治療反応が得られます。16週までに治療反応が得られない場合は投与中止も考慮いたします。
- 治療はいつまで行うのでしょうか?
- 痒みや湿疹の状態が改善し、良好な状態が得られてから、最低6か月間は治療の継続をお勧めします。アドトラーザ®投与終了後も、良い状態を保つために外用療法を継続する必要があります。
- デュピクセント®との違いは何でしょうか。
- デュピクセント®はIL-4、IL-13というサイトカインが細胞につく場所(受容体)に結合し、働きを抑えます。IL-4も阻害することでアトピー性皮膚炎の炎症をしっかり押さえる反面、結膜炎や乾癬様皮疹の出現に影響があるのではとの報告もありますが、今のところはっきりはしておりません。また、文献にて血中IL-4濃度はうつ病の重症度と関連する可能性があるとの報告もあり、うつ病や自殺行為等に関連する事象の発現には注意が必要な場合があります。
アドトラーザ®はIL-13のみに直接結合し、IL-13の働きを抑えます。アドトラーザ®は血中半減期が22日と長く、海外では4週間に1回の投与が認められています。結膜炎のリスクはデュピクセントに比較するとやや少ないようです。 - クレジットカードでの支払いは可能ですか?
- 当院では、保険診療は現金のみでのお支払いとなります。クレジットカード、電子マネー等は一切ご利用頂けませんので、予めご了承お願い致します。
- 症状の自己評価、POEMとは?
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ご自身で7つの簡単な自覚症状の質問にお答えいただくことで、アトピー性皮膚炎の重症度がわかります。
良くなったり悪くなったりを繰り返すアトピー性皮膚炎では、前向きに治療を続けていてもなかなか症状が改善せず、だんだんと治療に消極的になってしまうことがあるかもしれません。
投与前と投与後の複数回確認することで、治療の効果をご自身で評価していただけます。POEM(アトピー性皮膚炎患者さんのための症状チェックシート)直近1週間の皮膚の状態について、5つの選択肢からえらんでください。
POEMスコアが8点以上の方は中等度以上となり、デュピクセントの適応になる可能性があります。
- 各項目の総合得点(0~28点)を算出。
- 「0~2=消失又はほぼ消失」、「3~7=軽度」、「8~16=中等度」、「17~24=重度」、「25~28=最重症」高スコアほど悪い症候状態を表す
Charman CR et al. Arch Dermatol 2004;140:1513-1519
Charman CR et al. Br J Dermatol 2013;169:1326-1332
POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)を参考に作成