<中等~重症のアトピー性皮膚炎の方のためのお薬です>
アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚の内部では、サイトカイン※が過剰に出ている状態にあります。 その結果、炎症やかゆみ、皮膚バリア機能の低下を引き起こします。サイトカインには多くの種類がありますが、その中でもTh2細胞という 免疫細胞が作り出すIL-4、IL-13、IL-31などのサイトカインが関与しています。
炎症やかゆみを起こす情報を伝えるサイトカイン※が増加
サイトカインが炎症やかゆみに関わる免疫細胞の表面にある「受容体」という部分にくっつく
受容体に結合している酵素(JAK:ヤヌスキナーゼ)が炎症やかゆみに関する信号を細胞内の核に伝達
皮膚の炎症やかゆみが引き起こされ、皮膚状態の悪化
生物学的製剤がIL-4、IL-13、IL-31などの炎症性サイトカインを直接抑えるのに対し、JAK阻害薬はより深い炎症の信号を伝える経路のひとつであるJAKのはたらきを抑えることで、炎症を引き起こすシグナルが伝わりにくくなり、かゆみや、皮疹などの皮膚症状を改善します。
※サイトカイン:体内の細胞同士の情報伝達を行い、体を正常に機能させるために必要なたんぱく質。免疫機能が正常な場合は、病原菌やアレルゲン等の異物が 侵入してきた際に、免疫細胞から適切な量のサイトカインが分泌され、 異物から体内を守ります。アトピー性皮膚炎では、主にIL-4、IL-13、IL-31などのサイトカインにより2型炎症反応(Th2細胞による炎症)がおこり、皮膚のバリア機能の低下、アレルギー炎症、かゆみが引き起こされます。
アトピー性皮膚炎の治療では、以下のような状態を維持することを目指します。
- ① 症状がない状態、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態
- ② 軽い症状はあっても、急に悪化することはなく、悪化してもそれが続かない状態
治療の対象となる方
- ❶ アトピー性皮膚炎の症状が中等度から重症の方
- ❷ 通常の外用薬治療(ストロングクラス以上のステロイド外用薬やタクロリムス外用薬など)を6カ月以上行っても効果が不十分な方
- ❸ 本剤投与時にアトピー性皮膚炎の病変部の状態に応じた抗炎症外用剤や保湿外用剤を継続使用できる方(外用剤の併用が原則となります)
※アトピー症状の軽度の方、内服だけをご希望される方には適応がありません。
JAK阻害薬のメリット
- ❶ 外用薬を塗る量や手間を少なくすることが出来る
- ❷ ステロイド外用剤の強さ(ランク)を下げることが出来る
- ❸ 皮膚症状をより改善させ、生活の質を向上させることが出来る
- ❹ 1日1回の内服で済むので、注射剤に比べ楽
JAK阻害薬の副作用
JAK阻害薬を服用前に確認すること
JAK阻害薬の自己負担額の目安(当院は院外処方です)
現在、3種類のJAK阻害薬があります。
オルミエント®(バリシチニブ) :15歳以上
リンヴォック®(ウパタシチニブ) :12歳以上かつ体重30㎏以上
サイバインコ®(アブロシチニブ) :12歳以上
薬剤 | 4週間(約1か月)3割負担 |
---|---|
オルミエント® 4mg | 37,670円 |
オルミエント® 2mg | 19,320円 |
リンヴォック® 15mg | 36,340円 |
リンヴォック® 30mg | 52,500円 |
サイバインコ® 100mg | 36,020円 |
サイバインコ® 200mg | 54,010円 |
医療費助成制度
JAK阻害薬内服の治療費は高額になります。患者さんの経済的な負担を軽減するために、さまざまな医療費助成制度があります。
医療費助成制度について、詳しくは下記サイトをご参照ください。
高額療養費制度とは | 【アトピー性皮膚炎】アッヴィ公式サイト | リンヴォック®.jp
当院でのJAK阻害薬内服について
① 内服前診察+血液検査(平日のみ)+レントゲン検査(近隣内科医院にて)
6か月以上の外用薬治療が正しく行われていたかの確認
重症度の判定(IGAスコア、EASIスコア、病変面積の医師による判定)
症状の自己評価(POEMスコアシートの記入、POEMについては下記Q&A参照)
経過を判定するための採血や症状の写真を取らせていただく場合がございます。
※1年以内の健康診断の結果がある方は参考になりますのでお持ちください。
② 検査結果が問題なければ、内服開始。初回処方は1~2週間分となります。
③ 1~2週間後、効果、副作用のチェックを行い、問題なければ治療継続となります。
④ 治療を安心して続けるために、定期的な検査が必要です。
※他院にて内服中の方
転居などですでに他院で内服中の方にもご対応可能です。
ただし開始時の医師の皮膚症状の評価が必要になります。
紹介元からの紹介状(診療情報提供書)を必ずお持ち下さい。紹介状には「施設要件」「前治療要件」「疾患活動性の数値(IGAスコア・全身又は頭頚部のEASIスコア・体表面積に占める病変割合)」の記載が必須となります。いずれかの項目でも記載漏れがあると処方は出来かねますので、ご注意ください。
JAK阻害薬についてよくある質問 Q&A
- 受診した当日に処方をしてもらえますか?
- 受診当日に、処方はできません。これまでの治療期間や治療内容、自宅での処置の仕方などを確認し、皮疹の程度をスコア化します。その上で医師が適用と判断すれば、採血、レントゲン検査を行い、次回受診時に内服開始となります。採血については、平日限定の検査項目がありますので、土曜日・祝前日は採血ができません。また、胸部レントゲンについては近隣の内科医院にて撮影していただきます。
1年以内の健康診断の結果がある方は参考になりますのでお持ちください。 - 何時ぐらいに内服するのがよいのでしょうか?
- 内服時間に制限はありません。ご都合のよい時間帯に内服してください。
- どのくらいで効果の実感ができますか?
- 個人差はありますが、早い方で翌日にはかゆみの改善を実感されます。
- 症状が悪いときだけ飲めばよいですか?
- JAK阻害薬内服中は薬の作用で炎症を抑えているため、皮膚が良い状態にみえても、急にやめると症状が悪化する可能性があります。アトピー性皮膚炎は、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。自己判断で服用を中止したりせず、服用を続けることでかゆみが引き起こす負のサイクルをしっかりおさえましょう。
- クレジットカードでの支払いは可能ですか?
- 当院では、保険診療は現金のみでのお支払いとなります。クレジットカード、電子マネー等は一切ご利用頂けませんので、予めご了承お願い致します。JAK阻害薬の薬剤費についてはご利用の薬局に直接ご確認下さい。
- 症状の自己評価、POEMとは?
- ご自身で7つの簡単な自覚症状の質問にお答えいただくことで、アトピー性皮膚炎の重症度がわかります。
良くなったり悪くなったりを繰り返すアトピー性皮膚炎では、前向きに治療を続けていてもなかなか症状が改善せず、だんだんと治療に消極的になってしまうことがあるかもしれません。
投与前と投与後の複数回確認することで、治療の効果をご自身で評価していただけます。
アトピー性皮膚炎患者さんのための症状チェックカード下記1-7の質問に対し、回答を1つ選んでください。
このチェックカードでは、アトピー性皮膚炎の症状を数値化する評価ツールであるPOEM¹⁾を利用しています。
- 「なし(0日)」は0点、「1~2日」は1点、「3~4日」は2点、「5~6日」は3点、「毎日」は4点に換算。
- 各項目の総合得点(0~28点)を算出
- 「0~2=消失又はほぼ消失」、「3~7=軽度」、「8~16=中等度」、「17~24=重度」、「25~28=最重症」高スコアほど悪い症候状態を表す²⁾