2022年5月にロゼックス®ゲルの酒さへの適応追加が承認されました。1983年の報告以来、世界60以上の国又は地域で、承認を取得している外用剤です。酒さに対するロゼックスゲルの作用機序は、抗炎症作用と免疫抑制作用といわれております。
酒さとは、顔の赤み(赤ら顔)が特徴的な慢性炎症性疾患です。ひりひりする、痛い、ほてる、赤いぶつぶつや膿をもったぶつぶつなどの不快な自覚症状を伴うことがあります。男性より女性に多い傾向があります。
以前は症状を進行度、重症度で分類するステージ分類が使用されておりましたが、必ずしも進行性に変化するわけではなく、赤みだけが持続する例も多いことから、現在では症状によって分類するサブタイプ分類が提唱されております。
サブタイプ分類では、4つの病型が単独、もしくは混在しております。
① 紅斑毛細血管拡張型:顔の赤み、毛細血管が目立つ。
ほてり・かゆみなどを伴うことがある
② 丘疹膿疱型:赤いぶつぶつや膿をもったぶつぶつがみられる。
ニキビの原因である白ニキビ(面ぽう)はみられない
③ 腫瘤型:鼻の皮膚が厚くなり、こぶのようなものができる
④ 眼型:目の充血、異物感、かゆみ、乾燥、まぶしさなど眼症状のでるまれなタイプ
ステロイド酒さ(酒さ様皮膚炎)*、口囲皮膚炎**、ざ瘡、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、
アトピー性皮膚炎、花粉皮膚炎、光線過敏症、更年期障害、膠原病など
また、酒さの方は、これらの病気を合併している場合もあり、注意が必要です。
*ステロイド酒さ(酒さ様皮膚炎)
ステロイド外用をきっかけに、酒さと同じような赤み、ぶつぶつがでることがあります。
酒さの一種とする考え方があり、ステロイド外用薬以外にも、タクロリムス軟膏(アトピー性皮膚炎治療薬)の使用が原因のこともあります。
ステロイドを中止すると一時的に悪化することが多く、根気よく治療することが必要です。
必ず皮膚科を受診し、相談してください。
**口囲皮膚炎
口の周囲(口唇際は除く)や鼻唇溝部に酒さに似た赤みやぶつぶつがでます。
また、目の周りやまぶたにできるものを、「眼囲(がんい)皮膚炎」、口囲皮膚炎と眼囲皮膚炎が同時にあらわれると、「開口部皮膚炎」と呼ばれます。
酒さの原因は明らかになっていません。遺伝的な背景や環境因子が複雑に関与し、その刺激に個々の自然免疫が反応しているとも考えられています。
酒さの治療の柱は、①悪化原因の除去 ②スキンケア ③医学的治療 です。
① 酒さが悪化する原因を特定し、避けることが大切です。紫外線、心理ストレス、高気温、風、激しい運動、アルコール摂取、熱い風呂など、可能性のある増悪因子を避けるようにします。症状によっては、採血にてアレルギー検査をする場合もあります。
② 適切なスキンケアも治療の大事なポイントです。帽子や日傘などで紫外線から肌を守り、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用します。洗顔の際にはこすりすぎないよう注意しましょう。
③ 保険治療としては、ロゼックス®ゲルの外用があります。炎症が強い場合は、抗炎症作用のあるテトラサイクリン系の内服抗菌薬が使われることがあります。また、赤みやほてりなどに対して、漢方薬を使用する場合もあります。保険外治療(自費)としてはアゼライン酸クリーム、イベルメクチンクリーム、また広がった毛細血管に対して、レーザーや光治療(IPL:intense pulsed light)があります。
- お化粧はしてもよいでしょうか。
- 低刺激性の化粧品を選ぶことが大切です。ご使用のスキンケアを確認し、その中で、刺激になりやすいものは省いていただきます。人によっては一度すべて中止していただく場合もあります。引き算のスキンケアで肌に触れる回数を減らすことも大切です。
- ロゼックス®ゲルの使用量はどれくらいがよいでしょうか。
- 使用量は全顔で1回0.5g(1FTU:人差し指の第一関節分)、1日2回全顔使用した場合は2週間で約1本の使用となります。
- 酒さはどれくらいでよくなりますか。
- 数カ月で症状が治ることもあれば、数年かかる場合もあります。また、よくなったり、悪くなったりを繰り返す場合もあります。不快な症状が最低限にできるよう、根気よく治療していきましょう。