<中等症~重症のアトピー性皮膚炎の方のためのお薬です>
アトピー性皮膚炎の治療薬として初めての生物学的製剤(抗体医薬)です。
「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン:体内の細胞同士の情報伝達を行うタンパク質)の働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。
アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
治療の対象となる方
- ❶ アトピー性皮膚炎の症状が中等度から重症の方
- ❷ 通常の外用薬治療(ストロングクラス以上のステロイド外用薬やタクロリムス外用薬など)を6カ月以上行っても効果が不十分な方
- ❸ 本剤投与時にアトピー性皮膚炎の病変部の状態に応じた抗炎症外用剤や保湿外用剤を継続使用できる方(外用剤の併用が原則となります)
※アトピー症状の軽度の方、注射だけをご希望される方には適応がありません。
デュピクセント®治療のメリット
- ❶ 外用薬を塗る量や手間を少なくすることが出来る
- ❷ ステロイド外用剤の強さ(ランク)を下げることが出来る
- ❸ 皮膚症状をより改善させ、生活の質を向上させることが出来る
アトピー性皮膚炎の治療では、以下のような状態を維持することを目指します。
- ① 症状がない状態、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態
- ② 軽い症状はあっても、急に悪化することはなく、悪化してもそれが続かない状態
デュピクセント®の投与に注意が必要な方
デュピクセント®の投与により、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性疾患の症状が変化する可能性があります。アレルギー性疾患(喘息、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、じんましんなど)を合併している場合は、必ずお伝えください。
また合併するアレルギー性疾患の主治医にデュピクセント®を使用していることを必ずお伝えし、自己判断で治療薬を減量、中止をしないでください。
デュピクセント®の副作用
デュピクセント®の投与方法
初回に600mg(2本)、2回目以降は300mg(1本)を2週に1回皮下注射を行います。
※デュピクセント®の自己注射について
最大6バイアル(約3ヶ月分)まで処方が可能となります。
但し、自己注射を行う為には、院内で最低2回の指導を受けていただく必要があります。
デュピクセント®の注射部位
デュピクセント®の治療費
デュピクセントペン薬剤費 | 1本あたり 61,714円 |
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3割負担の方 | 1本あたり 18,514円(初回は2本:37,028円) |
※別途、初再診料、処方箋料などがかかります。
医療費助成制度
デュピクセント®投与に当たる治療費は高額になります。患者さんの経済的な負担を軽減するために、さまざまな医療費助成制度があります。
医療費助成制度について、詳しくは下記サイトをご参照ください。
デュピクセントの薬剤費と医療費助成制度について|デュピクセントを使用される患者さんへ|サノフィ株式会社
高額療養費制度について、詳しくはこちらをご参照ください。
高額療養費制度について
当院でのデュピクセント®導入について
① 導入前診察
(注射は予約制になります。即日の注射は当院では行っておりません。)
6か月以上の外用薬治療が正しく行われていたかの確認
重症度の判定(IGAスコア、EASIスコア、病変面積の医師による判定)
症状の自己評価(POEMスコアシートの記入、POEMについては下記Q&A参照)
経過を判定するための採血や症状の写真を取らせていただく場合がございます。
② 初回(1回目):院内で2本投与、自己注射指導
③ 2週間後(2回目):院内で1本投与、自己注射指導
④ 4週間後(3回目):
自己注射分の薬剤を処方。2か月分(4本)、または3か月分(6本)の処方が可能です。在宅自己注射開始(2週間に1回ご自身で注射を行います)
自己注射分の薬剤処方日には指導料として診察費の他に下記の負担金が発生致します。
3割負担の方 在宅自己注射指導管理料 | ¥1,860 |
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導入初期加算 | ¥1,740(開始後3か月のみ) |
使用した注射器は廃棄バックにいれて、次回受診時にお持ちください。
※自己注射が不安な方は、2週間ごとに院内で注射を行うことも可能です。
※他院にて導入済みの方
すでに他院で導入済みの方にもご対応可能です。
ただしデュピクセント導入時の医師の皮膚症状の評価が必要になります。
紹介元からの紹介状(診療情報提供書)を必ずお持ち下さい。紹介状には「施設要件」「前治療要件」「疾患活動性の数値(IGAスコア・全身又は頭頚部のEASIスコア・体表面積に占める病変割合)」の記載が必須となります。いずれかの項目でも記載漏れがあるとデュピクセントの投与・処方は出来かねますので、ご注意ください。自己注射の方は当日に処方箋の発行が可能です。
注射お知らせメールサービス
デュピクセント®についてよくある質問 Q&A
- 受診した当日に注射を受けられますか?
- 当院では、注射は予約制になります。即日の注射は行っておりません。
これまでの治療期間や治療内容、自宅での処置の仕方などを確認し、皮疹の程度をスコア化します。その上で医師が適用と判断されれば、次回受診時に投与開始となります。 - 何時ぐらいに注射するのがよいのでしょうか?
- 注射時間に特に決まりはありません。ご都合のよい時間帯に注射してください。
- 何回の治療で効果の実感ができますか?
- 個人差はありますが、1回目の注射後2週間で効果が認められる方もいます。通常投与開始から16週までには治療反応が得られます。16週までに治療反応が得られない場合は投与中止も考慮いたします。
- 治療はいつまで行うのでしょうか?
- 痒みや湿疹の状態が改善し、良好な状態が得られてから、最低6か月間は治療の継続をお勧めします。デュピクセント®投与終了後も、良い状態を保つために外用療法を継続する必要があります。
- 2023年9月発売の新規注射剤であるアドトラーザ®との違いは何でしょうか。
- デュピクセント®はIL-4、IL-13というサイトカインが細胞につく場所(受容体)に結合し、働きを抑えます。IL-4も阻害することでアトピー性皮膚炎の炎症をしっかり押さえる反面、結膜炎や乾癬様皮疹の出現に影響があるのではとの報告もありますが、今のところはっきりはしておりません。また、文献にて血中IL-4濃度はうつ病の重症度と関連する可能性があるとの報告もあり、うつ病や自殺行為等に関連する事象の発現には注意が必要な場合があります。
アドトラーザ®はIL-13のみに直接結合し、IL-13の働きを抑えます。アドトラーザ®は血中半減期が22日と長く、海外では4週間に1回の投与が認められています。結膜炎のリスクはデュピクセントに比較するとやや少ないようです。 - クレジットカードでの支払いは可能ですか?
- 当院では、保険診療は現金のみでのお支払いとなります。クレジットカード、電子マネー等は一切ご利用頂けませんので、予めご了承お願い致します。
- 症状の自己評価、POEMとは?
- ご自身で7つの簡単な自覚症状の質問にお答えいただくことで、アトピー性皮膚炎の重症度がわかります。
良くなったり悪くなったりを繰り返すアトピー性皮膚炎では、前向きに治療を続けていてもなかなか症状が改善せず、だんだんと治療に消極的になってしまうことがあるかもしれません。
投与前と投与後の複数回確認することで、治療の効果をご自身で評価していただけます。POEM(アトピー性皮膚炎患者さんのための症状チェックシート)直近1週間の皮膚の状態について、5つの選択肢からえらんでください。
POEMスコアが8点以上の方は中等度以上となり、デュピクセントの適応になる可能性があります。
- 各項目の総合得点(0~28点)を算出。
- 「0~2=消失又はほぼ消失」、「3~7=軽度」、「8~16=中等度」、「17~24=重度」、「25~28=最重症」高スコアほど悪い症候状態を表す
Charman CR et al. Arch Dermatol 2004;140:1513-1519
Charman CR et al. Br J Dermatol 2013;169:1326-1332
POEM(Patient-Oriented Eczema Measure)を参考に作成